まだまだ新人の部類ながらも、世界ランク上位で飛ばし屋のジョンラーム選手。一見すると彼のスイングはまるでスリークォーターショットのような見た目ですが、個人的には、アマチュアこそ参考にして欲しいスイングです。その理由と飛距離の秘訣について解説します。
アマチュアの悪癖を生むコッキングの弊害
一般的にゴルフスイングは「ここでコッキングして…、トップはシャフトが地面と平行で…」みたいな感じに、コッキングの重要性が語られることが多いと思います。
ですが、日本で一般的に語られるコッキングは、アマチュアにとってむしろ弊害が多いと、個人的には思っています。
というのも、コッキングという動作を手首を縦方向に折ることだと日本では教えられますが、それをすると、99.9%の人が、左手を甲側に折ってしまうからです。
これは、実際にやってもらうと分かると思います。
で、この動作の何が問題かというと、左手首を甲側に折る動きというのは、フェースが開く動きと連動しているからです。
なので、アマチュアの人の9割はコッキングを入れると、トップポジションでフェースが開いてしまっています。
ちなみにですが、トップポジションでのフェースの開き度合いというのはフェース面で判断出来ます。
下記画像は世界ランクNo1のダスティンジョンソン選手ですが、彼はトップで他の選手と比較してフェースが閉じていることで有名です。

実はスクエアフェイスのダスティンジョンソン選手
少し見にくいですが、ダスティンジョンソン選手は、トップでフェース面が上を向いています。
感覚的にフェースが上を向いていると、フェースが開いているように感じる人が多いんですが、実はフェースが上を向いているのは、フェースが閉じている状態です。
逆に開いている時は、フェース面は体の正面を差します。
ただし、ここで勘違いして欲しくないのは、ダスティンジョンソン選手のフェースが閉じていると言っても、あくまでも他の選手と比較してというだけで、フェースが上を向いている状態というのは、ほぼスクエアの状態です。
なので、ダスティンジョンソン選手は、フェースを閉じているというよりも、スイング中、常にフェースをスクエアにしているということです。
招き猫コックでコックの意識を変える
上では過剰な手首の縦方向へのコックは弊害を生むと言いましたが、ならどうれば良いのか。
ここでやっと登場、ジョンラーム選手。
ダスティンジョンソン選手でも良いですが、彼は捻転が半端じゃなさすぎて、アマチュアが真似をするにはちょっとしんどいというか…笑
そこで、似たようなハンドアクション、かつ過剰な体の捻りを使わないコンパクトなトップで打つジョンラーム選手のスイングがオススメです。
彼のスイングは一見すると、スリークォーターの様な超コンパクトトップ。
それでも飛距離は、2017年のディスタンスで”305.8yd(20位タイ)”です。
飛距離を生みだすのは捻転差であると言われているゴルフ界において、その常識を覆すような打ち方で飛ばす彼のスイングは、参考になる所がてんこ盛り。
その一つが、今回紹介する『招き猫コック』(私が適当に付けました)。
日本ではコックと言えば、手首を親指側に曲げる縦コックが一般的ですが、彼はそのコックをほぼ使いません。
縦という意味では、ほとんど『ノーコック』と言っても良いぐらいです。
その代わり、右手の”ヒンジング”と呼ばれる動きが強烈に入って来るのが特徴です。

左手首が強烈に手の平側に折れている
日本では手首の使い方をコッキングしか説明しないことが多いですが、海外では、コッキングと並び、ヒンジングと呼ばれる手首の横動作が良く取り上げられます。
このヒンジング動作がジョンラーム選手やダスティンジョンソン選手は他の選手に比べて強いですが、かといって、他の選手がヒンジングを行わないわけではありません。
そうではなく、ジョンラーム選手やダスティンジョンソン選手は、早い段階でヒンジング動作が強烈(MAXに近いレベルで)に入るだけで、全ての選手が、どこかで必ずヒンジングが発生します。
その理由がハンドファーストでのインパクトを作るためで、ヒンジングは、ハンドファースでのインパクトには必須です。
例えば、下記画像はジョンラーム選手のインパクト時の画像ですが、ドライバーですらこれだけハンドファーストで、左手首が手の平側に折れています。
よく、インパクトはアドレスの再現みたいなことが言われますが、実際にはそんなことはなく、アドレスと比べてインパクトの時は、ヒンジングが強くなります。
ヒンジングの作り方
ヒンジングと横文字で言われても我々日本人には馴染みがありませんが、簡単に言えば、シャフトを回す動作のことです。
両手でグリップして、その状態から右手の平を甲側に折るようにシャフトを回してみてください。
すると、左手首は手の平側に折られるはずです。
これがヒンジングと呼ばれる動きで、日本ではあまり語られることのない動きでもあります。
これは正しいフェースローテーションにおいても重要な動きで、フェースローテーションはシャフトを回転させることで行います。
これは別記事で詳しく解説しているので、興味があれば、下記リンク先の記事を見てみて下さい。
参照:アマチュアがハンドファースト×ダウンブロに打てない理由はフェースローテーションの方法が原因??
ジョンラーム選手のスイング解説
上で説明したように、ジョンラーム選手は”縦のコッキング”はほぼしていないと言いましたが、テイクバックからトップにかけて、ほぼノーコックでビッグアークを描きながらクラブを遠くに上げていきます。
なので、テイクバックで手元が体の横に来ても、手元とクラブが作る角度は他の選手と比較して、非常に”鈍角”です。
そして、手元が肩の位置に来る寸前ぐらいから胸郭と下半身が切り返しを始め、ダウンスイング後にコックが最大になります。
これは、無理にコッキングせず、テイクバックでは左手を差し込んで行く意識だけで、後はクラブの慣性でコッキングが勝手に行われているからで、切り返しの時にはまだ、クラブヘッドが上昇をしていて、上昇し切る前に切り返しの始めるので、ヘッドのと体で引っ張り合いが行われます。
そのままインパクトを迎え、上でも説明したように、インパクトの瞬間でも、左手首は手の平側に折れたままです。
一見、スリークオーターのような浅いトップにも関わらず飛距離を生み出せるのは、テイクバックから無理にコックを作らず、クラブヘッドに遠心力を掛けたまま、そのエネルギーを殺さずインパクトを迎えられるからです。
※とはいえ、アマチュアが真似して抜群に飛ぶようになるかと言えば、勿論そんなことはありませんが、無理にコックを作ってオーバースイングで、シャフトクロスで、みたいなスイングと比較して、飛距離がガクっと落ちることもありませんし、これぐらいのテークバックでも飛距離が落ちないという人は少なくないと思います。
テイクバックからヒンジングを行うことの利点
ほとんどのプロゴルファーは、どこかでヒンジングを行うと言いましたが、そのタイミングは様々です。
その中で、早い段階でヒンジングを行うのが、ジョンラーム選手やダスティンジョンソン選手ですが、それにはいくつか利点があります。
彼らは強烈なヘッドスピードを出しますが、現在のクラブ、特にドライバーはヘッドが大型化していることもあり、フェースの開閉が多いと、どうしてもフェースを閉じるのが間に合わず、スライスになりやすいです。
そこで彼らは、最初からフェースを閉じた状態にする(ヒンジングを強烈に入れる)ことで、高速スイングでも、フェースが開かないようにしています。
それと、シャフトクロスを直すのにも、ヒンジングは効果的で、ヒンジングをすると分かりますが、クラブヘッドが体の前方に出にくくなります。
なので、強いヒンジング動作をトップで入れている選手は、非常にレイドオフが強いトップになっていることが多いです。※ジョンラーム選手なんかもそうです。
一方で、左手首を甲側に折ると、シャフトクロスになりやすいです。
アマチュアでシャフトクロスに悩んでいる人は多いですが、一度ヒンジング動作を取り入れてみると、改善されるかもしれません。
勿論、それ以外の部分が原因の可能性もあるので、必ずしも治るわけではないので、あしからず…笑